「股関節周りの筋肉を鍛えると良い」とよく耳にしますが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
股関節は骨盤の左右に位置し、胴体と両脚を繋いでいる人体で最も大きな関節の一つで、人の体重を支え、動かす上で重要な役割を果たします。
歩く・走る・座ると言った動作で必ず使われますので、股関節の動きが悪いと腰や膝に負担がかかり痛みや怪我の原因にもなります。
股関節を安定させるための筋肉を鍛えることで、健康や運動パフォーマンスの向上が期待できます。
今回の記事では股関節の筋肉を鍛えるメリットと自宅でも出来る股関節を鍛えるトレーニングを3つに絞ってご紹介していきますので、最後までお読みいただけると幸いです。
股関節に働く筋肉
股関節は英語でHip Jointと言います。股関節に作用する筋肉は殿部、大腿部(太もも)の深部、股関節前面の筋群から構成されています。
身体を大きく屈曲させたり、脚を前後・左右に広げたり、外側や内側に回すなど、股関節は様々な動作を可能にしています。
股関節の筋肉を鍛えるメリット
姿勢の改善
現代人は長時間のデスクワークやスマホの使用で、姿勢の悪化に悩まされることが多いですよね。
股関節の筋肉を強化することで骨盤が正しい位置に保たれて安定し、全体の姿勢が改善されます。
姿勢が整うことで、腰や肩の負担が減り、疲れにくい体になります。
運動パフォーマンス向上
股関節の筋肉が安定していると、体をスムーズに動かすことができ、運動のパフォーマンスが向上します。
例えば、ランニングやジャンプ、サッカー、バスケットボールなどでは、股関節の筋力が爆発的なスピードや素早い方向転換を可能にします。
また、大臀筋を鍛えると爆発的なパワーが発揮できるようになりますので、アスリートにとっては股関節の強化がパフォーマンス向上の鍵となります。
腰痛・怪我の予防
腰痛の原因の一つに股関節の筋力不足が挙げられます。
股関節まわり、特に大臀筋(お尻の筋肉)や腸腰筋(太ももの付け根の筋肉)を強化することで体のバランスがよくなり、足や腰への負担が減り腰痛の予防や軽減が期待できます。
また日常の動作での転倒や、スポーツ中の関節や靭帯の損傷リスクの軽減にも効果があります。
日常生活が楽になる
股関節の筋肉を鍛えることで、座る、立つ、歩く、階段を昇るといった日常の動作がスムーズになります。
これにより、体力に自信がない方でも活動的な生活を楽しむことができますので、高齢者にとっては、転倒予防にもなるので、健康寿命の延伸にもなります。
股関節の筋肉を鍛える自重トレーニング
では股関節の筋肉を鍛えるためのトレーニングをご紹介していきます。
ブルガリアンスクワット
ブルガリアンスクワットは片足で行うスクワットで、片側の股関節に負荷を集中させる種目です。
大臀筋、中臀筋と言った臀部の筋肉と大腿二頭筋(外側ハムストリング)を効果的に鍛えられます。
鍛えられる部位
大臀筋
大臀筋は臀部の筋肉の中で最も面積が大きく、深部に中臀筋と小臀筋があります。
主な働きは股関節の伸展で、屈曲した状態から伸びたり、股関節の外旋・膝関節の伸展にも作用します。
階段を上ったり、座った状態から立ち上がる時に強く働き、ランニング、スクワット、坂を登る際にも働きます。
中臀筋
中臀筋は大臀筋の深部にあり、大部分が大臀筋に覆われています。
主な働きは股関節の筋肉外転、内旋、外旋で、直立姿勢で骨盤を支えたり、片足立ちの時に骨盤の安定化を図ってくれます。
大腿二頭筋
大腿二頭筋は外側ハムストリングスとも呼ばれ、股関節の安定性を保ち、体幹が屈曲するのを防ぐ役割をしています。
主な働きは股関節の屈曲、膝を曲げた時の下腿(膝下から足首まで)の外旋、股関節の伸展です。
股関節の安定性を保ち、膝を曲げたり外旋させる働きや、骨盤を後傾させる働きがあります。
ブルガリアンスクワットのやり方
まず、膝の高さぐらいの椅子やベンチを用意します。片足を乗せて支えるので安定したものを選びましょう。
- 椅子やベンチに背を向けた状態で50センチほど離れて立ちます。
- 片方の脚を後ろに伸ばし、つま先を椅子やベンチに乗せる。
- 背筋を伸ばし、前脚は真っ直ぐに前に向け、かかとがしっかり地面についていることを確認します。ここがスタートポジションです。
- 背筋を伸ばしたまま、上体を20〜30度程度前傾させながら、前脚の太ももが水平になるまで腰を落としていきます。
- 背筋を伸ばしたまま、元の位置に体勢を戻します。
- 3〜5の動作を繰り返します。
スタートポジションから腰を落として、元の姿勢に戻るまでを1レップとし、片足ずつ8〜10レップ、3セットから4セット行いましょう。
ブルガリアンスクワットのポイントと注意点
- 呼吸:体を下げる時に息を吸い、上げる時に息を吐きます。
- 膝の位置:体を下ろした時に前膝がつま先よりも前に出ないように注意してください。膝に負担がかかりすぎてしまいます。
- 体幹の安定:お腹に力を入れて、体がぶれないようにします。バランスを取るのが難しいと思うので初めはゆっくりとした動作で行ってみてください。
- 重心:前脚と後脚は8:2ぐらいのイメージで前足の母子球を意識すると体が安定します。バランスを取るのが難しい方は後ろ足の甲を寝かせて行いましょう。
- 負荷の調整:慣れてきたら、ケトルベルやダンベルを持って負荷を追加してみてください。
片足デッドリフト
片足デッドリフト(シングルレッグデッドリフト)は、主に大腿二頭筋(外側ハムストリングス)、臀部、体幹を鍛えるトレーニングで、バランス力も向上させることができます。
鍛えられる部位
大臀筋
大腿二頭筋
片足デッドリフトのやり方
- 足を肩幅程度に開いて、背筋をまっすぐに伸ばします。体の軸を安定させるために、しっかりとまっすぐな姿勢で立ちましょう。
- 両腕を自然に下げた状態で行います。体重を片足にかけ、もう一方の足は床から少し持ち上げた状態がスタートポジションです。
- 片足でバランスを取りながら、もう一方の足を後ろに伸ばしていきます。背筋を伸ばしたまま、腰を支点にして上体を前に倒していきます。後ろに伸ばした足は、体と一直線になるようにします。
- ハムストリングスと臀部の力を使って、上体を起こし元の姿勢に戻ります。このときも背中をまっすぐに保つことを意識しましょう。
- 2〜4の動作を繰り返し行います。
スタートポジションから体を落として、元の姿勢に戻るまでを1レップとし、片足ずつ8〜10レップ、3セットから4セット行いましょう。
片足デッドリフトのポイントと注意点
- 呼吸: 体を前に倒す時に息を吸い、元に戻る時に息を吐きます。
- 重心:片足にしっかりと重心を置き、かかとを地面に押し付けるように意識すると安定します。
- バランス:最初はバランスを取るのが難しいかもしれません。無理をせず、慣れるまでは、壁や椅子などに軽く手を添えて行ってみましょう。
- 膝の位置:前足の膝はつま先の上に位置するようにします。膝が内側に入らないように注意してください。
- 体幹の安定:お腹に力を入れて、体がぶれないようにします。初めはゆっくりとした動作で行ってみてください。
- 動作:お尻を後ろに引くイメージで、ハムストリングスが伸びているのを感じながら行ってみましょう。腰は下に下ろさないようにして、腰から前に倒れるイメージで、背中は常にまっすぐをキープして下さい。
- 負荷の調整:慣れてきたら、ケトルベルやダンベルを持って負荷を追加してみてください。
サイドスクワット
サイドスクワットは、太ももの内側や外側、殿部、体幹を強化するトレーニングです。
鍛えられる部位
内転筋(長内転筋、短内転筋、大内転筋、恥骨筋、薄筋)
長内転筋
内転筋の中で最も前方にあり、恥骨下部に並走している筋肉です。
主な働きは股関節の内転・屈曲で、太ももの引きつけや膝を閉じる際に働き、腰の回転にも影響を及ぼします。
短内転筋
大内転筋の上にかぶさっており、恥骨筋と長内転筋と共に働きます。
主な働きは股関節の内転・屈曲・外旋で腰の回転に影響を及ぼす筋肉で、スポーツにおいてはクロスステップや横移動時に働きます。
大内転筋
内転筋群の中で最も大きい筋肉です。男性の内転筋群は女性のそれより硬くなる傾向があると言われています。
男性の方が体が硬い人が多いのはこれが理由です。
主な働きは股関節の内転・股関節前部の屈曲・後部の伸展で、日常生活ではあまり使われませんが、乗馬や平泳ぎと言った内股に力がかかる際に働きます。
恥骨筋
内転筋の中で最も上部にある筋肉です。
主な働きは股関節の内転・屈曲・外旋で、腰の回転に影響します。まっすぐな線の上を歩く際にも働きます。
薄筋
恥骨結合部の外側から膝下の脛骨の内側にまたがる二関節筋で、太腿の内側を縦に走る細長い筋肉です。
主な働きは股関節の内転・膝関節の屈曲、膝下の内旋で、両膝を曲げて正座するときなどに働きます。
大腿四頭筋
太腿の前方にある4つの筋肉で構成されています。
主な働きは膝関節の進展で、大腿直筋は股関節の屈曲時にも働きます。膝の安定化や歩行、走行時の膝伸展の際に働く筋肉です。
大臀筋
サイドスクワットのやり方
- 足を肩幅より少し広めに開いて立ちます。つま先はまっすぐ前を向けるか、少し外側に向けます。背筋を伸ばし、胸を張り、肩をリラックスさせます。腕は体の前で軽く組むか、自然に下げておきます。
- 片方の足を大きく横に踏み出します。足を踏み出したときに、つま先と膝が同じ方向を向くようにしましょう。
- 踏み出した方の足に体重を乗せながら、膝を曲げて腰を後ろに引き、スクワットの姿勢をとります。このとき、反対側の脚は伸ばした状態になります。
- お尻を後ろに突き出すようにして、背中をまっすぐ保ちながら体を下げます。
- 踏み出した足で床を押しながら、体を元の立ち姿勢に戻します。
- 同じ動作を反対側の足でも行います。
- 2〜6の動作を繰り返します。
左右の足でスクワットを行って1レップとし、8〜12レップを3セットから4セット行いましょう。
サイドスクワットのポイントと注意点
- 呼吸: 体を下げるときに息を吸い、体を持ち上げるときに息を吐きます。
- 姿勢:背中が丸まらないように意識し、常にまっすぐな姿勢を保ちましょう。膝が内側に入らないように、しっかりと外側に向けた状態をキープします。
- 膝の位置:体を下げた時に膝がつま先を超えないように注意してください。
まとめ
股関節は胴体と両脚を繋いでいる人体で最も大きな関節の一つです。人の体重を支え、動かす上で重要な役割を果たします。
股関節の筋肉を鍛えることで姿勢の改善・スポーツパフォーマンスの向上・腰痛や怪我の防止・日常生活が楽になると言ったメリットがあります。
本記事で紹介した股関節の筋肉を鍛える自重トレーニング種目はブルガリアンスクワット・片足デッドリフト・サイドスクワットです。
ブルガリアンスクワット
片足で行うスクワットで主なターゲットは大臀筋、中臀筋と言った臀部の筋肉と大腿二頭筋(外側ハムストリング)です。
片足デッドリフト
片足で行うデッドリフト(シングルレッグデッドリフト)で、主なターゲットは大腿二頭筋(外側ハムストリングス)、臀部、体幹を鍛えるトレーニングで、バランス力も向上させることができます。
サイドスクワット
サイドスクワットは、太ももの内側や外側、殿部、体幹を強化するトレーニングです。
以上、股関節を鍛えるメリットと自宅でも出来る自重トレーニングのご紹介でした。
ちなみに「足腰がしっかりしている」と良く耳にしますが、この足腰とは股関節のことを指します。
足腰がしっかりしているということは股関節の筋肉が強く、安定していることです。
股関節をしっかり鍛えて、日常生活や運動パフォーマンスの向上を目指してみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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