【2025年版】MLBドラフト完全ガイド 制度・仕組み・注目選手まで徹底解説

MLB

こんにちは、Chanです!

今年も7月のオールスターウィーク期間中にMLBドラフトが開催されます。

NPBのドラフト会議はレギュラーシーズン終了後に行われるので、シーズン中にやるの?と思った方もいると思います。

また、MLBドラフトは様々な制度が絡んでいて、指名順がNPBのドラフトに比べて複雑です。

今回の記事はMLBドラフトの制度と歴史、NPBのドラフト会議との違い、ドラフトロッタリーやPPIといった近年導入された制度や注目選手について網羅的に解説します。

この記事を読むことで初心者の方から、MLBドラフトのことをもっと詳しく知りたいという方まで、

もうすぐ行われるオールスターゲームとともに、オールスターウィークのイベントの一つであるMLBドラフトをより一層楽しむことができるでしょう。

ぜひ、最後までご覧ください。

MLBドラフトの概要

MLBドラフトは、正式名称を「First-Year Player Draft(ファースト・イヤー・プレイヤー・ドラフト)」と呼び、毎年夏に開催される各球団による新人選手獲得のための指名制度です。

ドラフトで高校生や大学生などのアマチュア選手を各球団が指名し、プロ契約を結ぶシステムです。

MLBドラフトは全20巡目まで行われ、各巡において30球団が1人ずつ指名します。つまり、約600人以上の選手が指名を受けることになります。

これは日本のプロ野球(NPB)のドラフトと比較すると、はるかに大規模な選手獲得システムです。

ドラフトの指名順位は、前年の成績に基づいて決定されます。

MLBドラフトは完全ウェーバー制を採用しており、基本的に前年の成績が悪いチームから優先的に指名権を与えられるシステムで、戦力均衡を図る目的があります。

ただし、近年はドラフトロッタリー制度が導入され、最下位チームが必ずしも1位指名権を獲得できるわけではなくなりました

  • 対象選手:米国・カナダ・プエルトリコの高校・大学・ジュニアカレッジなどのアマチュア選手
  • 開催時期:毎年7月(かつては6月だったが、オールスター前週に移動)
  • 指名方式:30球団が1巡ずつ指名を行い、原則最大20巡

NPBドラフトとの違い

MLBドラフトと日本プロ野球(NPB)のドラフトには、いくつかの大きな違いがあります。

規模の違い

最も顕著な違いは、その規模です。NPBでは12球団各4〜10人程度を指名するのに対し、MLBでは30球団20巡にわたって600人以上を指名します。

これは、MLBがマイナーリーグシステムを持ち、多くの選手を育成する必要があるためです。

契約金の規模

契約金の規模も大きく異なります。NPBでは、契約金の上限として「1億円+出来高5,000万円」が目安とされています。

それに対して、MLBでは2023年に全体1位指名されたポール・スキーンズ投手が920万ドル(約13億8,300万円 1ドル=150円換算)で最高記録を更新しており、その差は9倍以上にもなります。

指名対象選手

指名対象となる選手の条件も異なります。

NPBでは日本国内の高校生、大学生、社会人、独立リーグ選手などが対象となりますが、MLBでは米国、カナダ、プエルトリコ、その他米国領に1年以上居住している選手が対象となります。

戦略性

MLBドラフトでは、ボーナスプールという契約金予算が設定されています。

予算額には制限があるため、球団は戦略的に指名を行います。

例えば、1巡目で契約金を節約できる選手を指名し、その分を他の順位で有望選手獲得に充てるという戦略が取られることがあります。

MLBドラフトとNPBドラフトの比較表

項目MLBドラフトNPBドラフト
参加球団3012
指名方式完全ウェーバー制+ロッタリー1巡目入札抽選+ウェーバー/逆ウェーバー
指名人数600人以上(20巡)100〜120人程度
指名対象アメリカ・カナダ・プエルトリコのアマチュア選手日本国内のアマチュア選手
指名権トレード原則不可 ※戦力均衡ラウンドの指名権のみトレード可能不可
指名重複時なし(独占交渉権)抽選による交渉権決定
育成・下部組織複数階層のマイナー組織
2軍・3軍
ボーナスプール契約金総額の制限ありなし
※球団ごとの総額制限はないが、1選手ごとの標準額はある

ドラフト導入の背景と歴史

MLBドラフトが導入される以前、アマチュア選手の獲得は完全に自由競争でした。

そのため、各球団が独自に選手をスカウトし、契約を結んでいたため、資金力のある球団が有望選手を独占する状況が続く事態が続きます。

この状況は戦力格差の拡大を招き、リーグ全体の競争力低下が懸念されるようになりました。

1965年に初めてMLBドラフトが開催され、アマチュア選手の獲得に一定の秩序がもたらされることになります。

しかし、1960年代後半以降、代理人交渉制度が認められるようになるとドラフト指名された有望選手にも代理人がつくようになり、契約金の高騰が起こったのです。

この契約金高騰により、資金力に劣るチームは指名順位が高くても目玉選手を指名できず、指名順位が低いにもかかわらず資金力のあるチームがその選手を獲得できてしまう問題も発生しました。

こうした問題を解決するため、MLBは段階的に制度改革を行ってきました。

交渉期限の設定、スロット額(契約金推奨額)の導入、そして2012年からはボーナスプール制度を導入し、各球団の契約金総額に上限を設けることで、戦力均衡を図る取り組みを強化しています。

2025年MLBドラフトの概要

開催日時2025年7月13日・14日(日本時間7月14日・15日)
開催地アトランタ

2025年のMLBドラフトでは、例年通り30球団が20巡にわたって選手を指名します。

1巡目から2巡目は特に注目度が高く、メディアの中継も行われます。各球団のドラフト戦略や指名選手の動向は、ファンや関係者から大きな関心を集めています。

ドラフトの指名順序は、前年の成績とドラフトロッタリーの結果によって決定されます。

2025年MLBドラフトの指名順位

指名順位チーム
1ワシントン・ナショナルズ
2ロサンゼルス・エンゼルス
3シアトル・マリナーズ
4コロラド・ロッキーズ
5セントルイス・カージナルス
6ピッツバーグ・パイレーツ
7マイアミ・マーリンズ
8トロント・ブルージェイズ
9シンシナティ・レッズ
10シカゴ・ホワイトソックス
11オークランド・アスレチックス
12テキサス・レンジャーズ
13サンフランシスコ・ジャイアンツ
14タンパベイ・レイズ
15ボストン・レッドソックス
16ミネソタ・ツインズ
17シカゴ・カブス
18アリゾナ・ダイヤモンドバックス
19ボルティモア・オリオールズ
20ミルウォーキー・ブルワーズ
21ヒューストン・アストロズ
22アトランタ・ブレーブス
23カンザスシティ・ロイヤルズ
24デトロイト・タイガース
25サンディエゴ・パドレス
26フィラデルフィア・フィリーズ
27クリーブランド・ガーディアンズ

MLBは30チームのはずなのに、指名順位が27位までしか載ってないよ?

MLBドラフトには贅沢税超過によるペナルティが課せられるため、対象のチームは当初の指名順位から10位繰り下げられます。

このペナルティによりニューヨーク・メッツは38位、ニューヨーク・ヤンキースは39位、ロサンゼルス・ドジャースは40位指名となります。

  • 上位6チームはロッタリーで決定
  • 7位以降は前年の成績順が基本だが、ポストシーズン進出の有無収益分配の対象球団かどうかによって細かく調整される
  • ポストシーズン進出チームは19位以降、成績順
  • 贅沢税閾値4,000万ドルを超過すると対象チームのドラフト順位が10位繰り下げられるペナルティあり

ドラフトロッタリーの概要

ドラフトロッタリーは、MLBが戦力均衡を図るために2023年から導入した新しいシステムです。

従来は前年の成績が最も悪いチームが自動的に1位指名権を獲得する完全ウェーバー制が採用されていました。現在は抽選によって上位指名権が決定されます。

ロッタリーの対象となるのは、プレーオフに進出しなかった18チームです。これらのチームが、ダラスで行われるウィンターミーティング中に開催される抽選会に参加。

ロッタリーシステムでは、成績の悪いチームほど上位指名権を獲得する確率が高くなるよう設計。

最下位チームが1位指名権を獲得する確率が最も高く、成績が良くなるにつれて確率は下がります。

ただし、連続して同じチームが1位指名権を獲得することを防ぐため、前年1位指名権を獲得したチームは翌年の1位指名権獲得確率が制限されます。

このシステムは、意図的に負けることで高い指名権を狙う「タンキング」と呼ばれる行為を抑制する目的で導入されました。

抽選制により、最下位になっても必ずしも1位指名権を獲得できないため、チームは常に勝利を目指すインセンティブが強まります。

契約金とボーナスプール

MLBドラフトにおける契約金システムは、非常に複雑かつ戦略的な要素を含んでいます。その中核となるのが「ボーナスプール」制度です。

ボーナスプールとは

ボーナスプールとは、MLBドラフトにおける「契約金の総予算」のこと。

各球団の1巡目〜10巡目の指名順位に応じて設定された「スロット金額」の合計が、その年のボーナスプール(ドラフト予算)になります。

スロット金額システム

各年のドラフト開催前にあらかじめ、10巡目までの全指名順位ごとに、契約金の目安(Pick Value)が設定されます。その合計金額が、各球団の契約金推奨額(ボーナスプール)となります。

例えば、1位指名権のスロット金額は約800万〜900万ドル、2位は約700万〜800万ドルといった具合に、指名順位が低くなるほどスロット金額も減少します。

各球団は、自分たちが持つ全指名権のスロット金額を合計した額がボーナスプールとなります。

2025年の主な球団のボーナスプール額

球団名ボーナスプール額
シアトル・マリナーズ17,074,400ドル
タンパベイ・レイズ16,699,400ドル
ロサンゼルス・エンゼルス16,656,400ドル
ワシントン・ナショナルズ16,597,800ドル
ボルティモア・オリオールズ16,513,100ドル
コロラド・ロッキーズ15,723,400ドル
マイアミ・マーリンズ15,187,400ドル

出典 MLB.com

超過した場合のペナルティ

球団がボーナスプールを超過して契約した場合、厳しいペナルティが課されます。

超過額に応じて罰金が科せられ、さらに大幅に超過した場合は翌年のドラフト指名権を失うこともあります。

戦略的な活用

ボーナスプールシステムにより、球団は戦略的にドラフトを活用するようになりました。

1巡上位の指名権を持つチームは、契約金の総額(ボーナスプール)を分散させる戦略を取ることが多く見られます。

つまり、上位指名権であえて契約金を”節約”できるような選手を選び、2、3番目の指名権でも契約金が高くなりそうな有望選手を獲得するという手法も用いられています。

11巡目以降の特別ルール

11〜20巡目指名の選手で12万5,000ドル以上の契約金を費やした場合、その超過額はボーナスプールに加算されるという特別なルールもあります。

このルールにより、下位順位での「掘り出し物」選手の獲得にも制限がかけられています。

PPIと戦力均衡ラウンド

MLBドラフトには、基本的な20巡以外にも特別な指名権が存在します。

その代表的なものが「PPI(Prospect Promotion Incentive)」と「戦力均衡ラウンド(Competitive Balance Round)」です。

PPI(Prospect Promotion Incentive)

PPIは、有望な新人選手を育成した球団に対するインセンティブとして設けられた制度です。

プレシーズンにMLB Pipeline、Baseball America、ESPNの各機関が発表するプロスペクトランキングのうち、2つ以上でトップ100プロスペクト入りした選手が開幕ロースターに登録され、

年俸調停権獲得前ルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞したり、MVP、サイ・ヤング賞投票で3位以内に入った場合、その球団は1巡目終了後にPPI指名権を獲得できます。

このシステムは、サービスタイムの調整により、有望選手のFA権獲得を遅らせることを防止し、積極的にメジャーで起用することを促進することで、ファンにとっても楽しみな新人選手を見る機会を増やす効果があります。

サービスタイムについてはこちらの記事で解説しています 

戦力均衡ラウンド(Competitive Balance Round)

戦力均衡ラウンドは、小市場球団や収益が比較的低い球団に対して追加の指名権を与える制度です。

この制度により、資金力に劣る球団でも有望選手を獲得するチャンスが増え、リーグ全体の戦力均衡が図られています。

戦力均衡ラウンドは、1巡目終了後(ラウンドA)と2巡目終了後(ラウンドB)の2回実施されます。

対象となる球団は、収益や市場規模などの複数の要因に基づいて選定され、これらの球団は通常の指名に加えて追加の指名機会を得ることができます。

  • 対象球団は主に市場規模下位10球団または球団収益下位10球団のいずれかの対象球団から抽選で選ばれる
  • 戦力均衡ラウンドA・Bの指名順は、前年の勝率上位順で決まる
  • ラウンドAの指名権を得た球団は、翌年はラウンドBの指名権を得るなど、毎年交互に入れ替わる
  • 戦力均衡ラウンドの指名権は特例として、選手や金銭とのトレードが可能

国際アマチュア選手枠 インターナショナルFA制度

MLBには国際アマチュア選手に対する別の獲得システムも存在します。

これは主に中南米諸国の選手を対象としており、ドラフトとは別のボーナスプールが設定されています。

日本人選手の場合、高校卒業後に直接MLBと契約する場合は、この国際枠での契約となることが一般的です。

  • インターナショナルFA制度を利用して東京の桐朋高校から森井翔太郎がアスレチックスと契約
インターナショナルFAについては過去の記事で詳しく解説しています

2025年MLBドラフトの注目選手

2025年のMLBドラフトの注目選手を2人紹介します。

イーサン・ホリデイ(Ethan Holliday)– SS

プロフィール

イーサン・ホリデイは元メジャーリーガーのマット・ホリデイの息子で、兄は2022年のMLBドラフト全体1位指名でオリオールズに入団したジャクソン・ホリデイという、野球エリート一家の出身です。

6フィート4インチ(約193cm)、210ポンド(約95kg)で右投げ左打ちの大型内野手です。

現在在籍しているオクラホマ州の高校ではショートとしてプレーしていますが、プロではサードへのコンバートが予想されています。

選手としての特徴

打撃

  • バットスピードとパワーが特徴で、高校生としては異例の打球速度(111マイル)を記録し、将来的には30ホームラン以上が期待できるパワー型
  • 引っ張り方向への強い打球が特徴で、選球眼が良く、ボール球を追うことが少ない。
  • 一方で三振率や空振りの多さが課題で、今後の成長ポイント。

守備・走塁

  • 守備ではショートとしてスムーズな動きと強肩を持っているが、将来的にはサードが適性と見られている
  • 走塁は平均的だが、今後パワー面での成長によりスピードはやや落ちる可能性あり

ケイド・アンダーソン(Cade Anderson) – LHP

プロフィール


LSU(ルイジアナ州立大学)所属の左投手で、ドラフト1位指名候補として高い評価を受けています。

トミー・ジョン手術を経て復活し、先発投手としての安定感を見せています。

選手としての特徴

  • 高い奪三振能力と制球力を兼ね備え、圧倒的なパフォーマンスを披露
  • 球種はカーブスライダーチェンジアップで右打者にはスライダー、左打者にはチェンジアップを多用し、カーブを織り交ぜたコンビネーションが特徴

まとめ

MLBドラフトは、単なる新人選手獲得システムを超えて、リーグ全体の戦力均衡と競争力向上を図る重要な制度として機能しています。

ボーナスプール制度、ドラフトロッタリー、PPI、戦力均衡ラウンドなど、複数の仕組みが組み合わさることで、各球団が戦略的にチーム作りを行うことができる環境が整備されています。

NPBドラフトと比べても、その規模や制度の複雑さ、契約金の金額すべてにおいて圧倒的な差があります。これは、MLBが持つ巨大な市場規模と収益力、そして30球団×マイナーリーグシステムという大規模な育成システムを反映しています。

2025年ドラフトは、オールスターウィーク中の7月13日から14日にかけてアトランタで開催され、多くの有望選手がプロの世界への第一歩を踏み出します。

ドラフトロッタリーにより、どの球団が上位指名権を獲得するか、各球団の戦略的な指名、そして契約交渉に至るまで、全てに注目が集まります。

この記事でMLBドラフトをより楽しむことができれば幸いです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

オールスターゲームについてはこの記事で解説しています
オールスターウィーク中の関連イベント ホームランダービーについてはこちらの記事で解説しています
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