MLBの契約用語と契約に重要なオプションの意味

MLB

こんにちは!chanです。

現地時間12日までMLBではウインターミーティングが開催され、FA市場やトレードの動きが活発化しました。

選手の移籍が活発なMLBですが、FAにて他チームとの契約が結ばれた際に、オプションや様々な条項が盛り込まれていることがあります。

これらの契約ルールが選手の移籍背景に大きく影響を与えており、契約用語について知っていると移籍情報や選手の動きがより理解できるようになります。

今回は知っておきたい契約用語に関する記事を書きましたので、オフシーズンもMLBを楽しみたいと言う方は是非最後までお付き合いください。

FA制度の仕組みや今オフのFA市場の注目選手に関する記事はMLBのFA制度の仕組みと2024-2025年のFA選手ランキングをご覧ください。

契約オプション

契約によく盛り込まれるオプションについて解説していきます。

プレイヤーオプション(Player Option)

契約期間終了後に選手が契約延長するか決める権利を持つオプションです。

契約の仕組みと特徴

プレイヤーオプションは通常、複数年契約の最終年に設定されます。

オプション行使の判断

選手は残留かFAかを判断をします。

  1. オプション行使⇨契約が延長・継続され選手はチームに残留。
  2. オプション放棄⇨契約終了となり、FA市場に出ることになります。
特徴
  • 選手に有利なオプションで、パフォーマンスや市場価値を見て判断することが可能です。
  • 市場価値が高まった場合、オプションを破棄してFAになることが一般的です。

契約の具体例

例1.ルイス・セベリーノ

今オフにメッツからFAとなったルイス・セベリーノはアスレチックスと3年6700万ドルで契約合意しました。セベリーノの契約には、契約最終年の2027年にプレイヤーオプションが付加されています。

2027年シーズンにセベリーノが活躍し、好成績を収めればオプションを破棄してFAとなることも。また思うような成績を残せず、オプションを行使して残留することも可能です。

例2. カルロス・ロドン

2022年、カルロス・ロドンはジャイアンツと2年4400万ドルの契約の1年目終了時にプレイヤーオプションを設定。

ロドンは31試合に登板し、178イニングを投げ、防御率2.08、237奪三振、rWAR5.2を記録するなど、見事に好成績を残し、オプションを破棄してFAとなり、ヤンキースと6年1億6200万ドルの大型契約を獲得しました。

クラブオプション(Club Option)

契約期間終了後に、球団が契約を延長するかどうかを決める権利を持つオプションです。

契約の仕組みと特徴

複数年契約の最終年や契約の追加期間に設定されることが多く、球団が一方的にオプションを行使するか破棄するかを決定できます。

オプション行使の判断

球団はシーズン終了後や指定された時期にクラブオプションを行使するか決定します。

  1. オプション行使⇨契約が延長・継続され選手は残留。
  2. オプション放棄⇨契約終了となり、選手はFAとなります。
特徴
  • 球団に有利なオプションで、選手のパフォーマンスを見た上で契約を延長するかを決めます。
  • 契約延長をしない場合、球団は「バイアウト(buyout): 契約解除金」を選手に支払うケースがほとんどです。
  • バイアウト金額はあらかじめ契約書に明記されており、数百万ドル程度になることが多い。

契約の具体例

例1. エドウィン・ディアス

2022年のシーズンオフにメッツと5年1億200万ドルで契約延長したエドウィン・ディアスの契約には契約最終年の2028年シーズンにクラブオプションが付加されています。

2028年のディアスの年俸は1725万ドルで、メッツがオプションを破棄してディアスがFAとなった場合にはバイアウトの100万ドルが支払われ、実質、年俸の1725万ドル+バイアウト100万ドルの1825万ドルがディアスに支払われる形となります。

例2. エバン・ロンゴリア

2008年、レイズと6年1750万ドルで契約。契約には7年目、8年目、9年目と3回のクラブオプションが設定されていました。

レイズはロンゴリアの成績を評価し、クラブオプションを順次行使していき、結果的にロンゴリアは長期にわたってレイズでプレーしました。

例3. ジョニー・クエト

2016年、ジャイアンツと6年1億3000万ドルで契約。6年目終了後にクラブオプションが設定されました。

クエトは移籍1年目こそ32試合に登板し、219.2イニングを投げ、防御率2.79、rWAR5.5を記録し、オールスター出場、サイヤング投票6位と素晴らしいパフォーマンスを見せました。

2年目以降は故障にも苦しみ、パフォーマンスの低下により成績が奮わず、契約最終年の2021年シーズン終了後、ジャイアンツはクラブオプションを放棄、バイアウトを支払って契約が終了となりました。

相互オプション(Mutual Option)

契約期間終了後に球団と選手の双方が契約延長に合意した場合のみ契約が延長されるオプションです。

契約の仕組みと特徴

通常、複数年契約の最終年に相互オプションが設定されます。

オプション行使には双方の合意が必要

選手・球団双方の合意によりオプションが行使されます。

  1. 選手⇨契約を延長してチームに残留するかFAになるかを選択します。
  2. 球団⇨選手を残留させるか、契約を終了するかを選択します。

双方が「残留」に合意した場合のみ、契約延長となります。どちらかが、オプションを拒否すれば契約終了となり、選手はFA市場に出ることになります。

特徴
  • 双方による合意が必要なため、オプションが行使されることは稀です。
  • 相互オプションが成立せず、選手がFAを破棄してFAになることが一般的です。
  • 球団がオプションを行使しない場合や双方が合意しなかった場合、通常は選手にバイアウトが支払われます。

契約の具体例

例. カイル・ヒガシオカ

今オフにパドレスからFAとなったカイル・ヒガシオカはレンジャーズと2年1350万ドルで契約合意しました。相互オプションが成立した場合2027円シーズンは年俸700万ドルに、オプションが行使されなかった場合は100万円のバイアウトが支払われます。

ベスティングオプション(Vesting Option)

特定の条件を満たした場合に、金額や契約延長が保証されるオプションです。

契約の仕組みと特徴

契約において、あらかじめ条件が設定されます。

契約の特徴

  • 条件には出場試合数、投球回数、打席数などが設定されます。
  • 球団も選手も条件次第ではリスクがコントロールできます。
  • キャリア終盤に差し掛かった選手や故障のリスクが高い選手に多い契約です。

契約の具体例

例. カルロス・コレア

2022年のシーズンオフにツインズと6年2億ドルで契約延長したカルロス・コレアの契約には2028年に575打席達成で翌2029年シーズンのオプションが行使され2500万ドルの年俸が保証されます。

さらに2029年には550打席達成、2030年に525打席達成、2031年に502打席達成で翌年オプション行使される契約となっています。

更にMVP投票5位以内、シルバースラッガー賞、ワールドシリーズMVP、リーグチャンピオンシップシリーズ MVP獲得でも翌年のオプションが行使される契約条項が盛り込まれています。

オプトアウト(Opt-out)

契約期間に選手が途中で契約を破棄し、FAになる選択権を持つオプションです。近年では契約に盛り込まれることが多く、契約交渉の重要なポイントになります。

基本的な仕組み

  • 契約期間中の特定のタイミング(契約の中盤や後半に多い)に盛り込まれます。
  • 選手はそのタイミングで契約を継続するかFAになるか選択できます。
  • オプトアウトを行使した場合は残りの契約は無効となり、選手はFAとなります。

オプトアウトのメリット

選手側
  • 市場価値を最大化できる

契約期間中に選手が好成績を残し、市場価値が上がった場合、オプトアウトを利用して新たな大型契約を目指すことができます。

  •     交渉のカードとなる

球団に対してオプトアウト後の再契約を交渉材料とすることで、より良い条件を引き出すことができます。

球団側
  • 契約金額を抑えられる場合がある

球団は選手にオプトアウトの権利を与えることで、契約金総額を抑える契約を結ぶことが可能となります。

  • リスクの軽減

選手がオプトアウトを行使すれば契約終了となるため、長期契約での選手の成績低下リスクを軽減できます。

オプトアウトのデメリット

選手側

オプトアウトを行使してFAになった場合、市場価値が期待より低くなって、元の契約内容を下回ってしまうことがあります。

球団側

チームにとって重要な選手をオプトアウトで失う可能性があります。

契約の具体例

例1. フアン・ソト

今オフのFA史上最大の目玉、ファン・ソトが先日メッツと史上最高額となる15年7億6500万ドル(約1,176億2,000万円)で契約しました。

ソトの契約には2029年シーズン終了後にオプトアウトが付加されています。

ただし、メッツは2030年から2039年までの給料に年400万ドルを追加することで、このオプトアウトを避けることができる契約内容が盛り込まれています。

このオプトアウト破棄条項が行使されると、ソトは契約期間の後半10年間で4,000万ドルが追加されることになり、契約総額は8億ドルを超えることになります。

例2. ブレイク・スネル

2023年シーズン、自身2度目のサイヤング賞を受賞し、パドレスからFAとなったブレイク・スネルはFAとなり、2024 年にジャイアンツと2年6200万ドルで契約。

契約には2024年終了後にオプトアウトが盛り込まれていました。

スネルは序盤こそパフォーマンスが振るいませんでしたが、6月以降は2023年シーズンの輝きを取り戻したため、シーズン終了後にオプトアウトを行使し、FAとなりました。

後払い契約(Deferred)

選手に支払う契約金や年俸の一部を、契約期間終了後に分割して支払う仕組みです。球団側にはキャッシュフローを調整し、短期的な財政負担や贅沢税の負担軽減が可能となり、選手側にとっては将来の収入が保証されます。

契約の特徴

  • 支払いの遅延

契約金や年俸の一部は契約期間中に支払わず、契約終了後や契約終了から数年後に分割で支払われます。

  • 長期にわたる支払い

支払い期間が数年から数十年にわたる場合もあり、選手の引退後も収入を得ることができます。

契約の具体例

例1. ブレイク・スネル

今オフにオプトアウトを行使してジャイアンツからFAとなった、ブレイク・スネルは5年1億8200万ドルでドジャースとの契約に合意しました。このうち6500万ドルは、2030年に1000万ドルが支払われ、残りの5500万ドルは2035年から2046年にわたって毎年550万ドルが支払われることになります。

例2. 大谷翔平

2023年、ドジャースと10年7億ドルで契約。そのうち6億8000万ドルが2034年から2043年にわたって毎年6800万ドルが支払われます。

つまり大谷選手は契約総額の約97%が後払いとなります。

後払い契約はスター選手の長期契約によく見られるものですが、通常は契約総額の30%以下が後払いになるケースがほとんどです。

それを踏まえると大谷の後払い契約が前例のないものだと言うことがよくわかります。

まとめ

  • プレイヤーオプションは通常、複数年契約の最終年に設定され、選手がオプションを行使して残留するか放棄してFAになるかを選択します。プレイヤーオプションは選手契約期間中に自らの市場価値を最大化するた目の重要な手段です。
  • クラブオプションは通常、複数年契約の最終年や契約の追加期間に設定され、球団側がオプションを行使して選手の契約を延長させるか、放棄して契約終了するかを選択します。クラブオプションは球団に裁量を与える契約条項で、チームの戦力維持やコスト管理のための重要な手段と言えます。
  • 相互オプションは通常、複数年契約の最終年に設定され、選手・球団双方が合意した場合のみ契約延長となります。主にベテラン選手や短期契約に盛り込まれことが多く、双方にとって柔軟性が高いが行使されるケースは少ない。
  • ベスティングオプションは定められた選手の出場機会や成績といった条件が達成されると、オプションが行使され、選手にとってインセンティブや契約が延長される契約条項で、ベテラン選手や故障リスクのある選手に多く見られるオプションです。
  • オプトアウトは契約期間中に選手が契約を破棄することができる契約条項です。選手にとってはキャリアを有利に進める手段となり、球団にとってはコスト低減や長期契約における成績低下リスクを軽減できます。
  • 後払い契約は選手に支払う契約総額の一部を契約終了後に分割して支払う契約条項です。選手は将来も収入が保証され、球団はスター選手の大型契約における短期的な財務負担を軽減できます。

MLBでは契約内容の詳細が公表されますので、自分の応援しているチームの選手やFAで契約が決まった選手がどんな契約を結んでいるかを知ることができます。

契約にはオプションが設定されていることが多いので、どのようなオプションがついているか、オプションの内容を知ることで、選手やチームの動向に注目するようになりますので、オフシーズンをより楽しめるようになります。

この記事が参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

契約用語や内容の参考: Spotrac

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